水澤圭輔は小説家。恋愛小説で売れっ子だったが最近はスランプ。理由は二つ。一つは彼の書く甘いだけの話が時代に合わなくなってきた。本来ならば焦らねばならないのに彼は問題を先送り。その訳は・・・。それは、18歳も年下の若い後妻・真衣をもらい夢見心地なのだ。
圭輔は東京下町で四代続いた和菓子屋に生まれ、母の梅子と二人暮し。大学時代に大恋愛し同級生の克子と結婚、一人息子・健太郎にも恵まれた。そして和菓子屋は母と職人源造に任せ、菓子屋を継がず、広告代理店に就職した。しかし作家としてデビューすると会社は退職し実家暮らし。
ところが、二年前克子が病に倒れ他界。その1年後に母が亡くなり、健太郎も大学入学と同時に家を出た・・・そして一人寂しい圭輔は読者であった真衣と再婚したのである。そうなれば家の模様替えもし、今や彼は若い新妻、真衣に夢中。店の管理も、作家の仕事も何も手につかない。
物語はここから始まる。
幕開くと圭輔の家のリビングには彼を作家として育てた雑誌社の編集長、尾崎が原稿の締め切りが迫り催促に来ている。そして大挙して訪れている町内の住民たち。圭輔の家の隣の寺が墓地を売り出し、再開発に乗り出そうというのである。町内の檀家は大騒ぎ。そこで檀家でもありマスコミにも著名な圭輔にすがろうというので押しかけているのだ。だが彼はそんなことより妻のほうに夢中。みなを追い返し、昼間からワインを開けイチャイチャと二人きりの時間を楽しんでいた。
そんな時不思議な現象が起こった。仏壇がゆれ、幽霊が現れたのである。それは先妻の克子だった。驚き恐れる二人を後目に克子は落ち着いたもの。
「後妻の真衣に嫉妬して出てきたのか」
「あなたが誰と結婚しようと私には興味なんてありません」
「じゃ何しに出てきたんだ」
「あの世へ行き私は楽しかった。先に亡くなった両親や弟と再会し、楽しく暮らしていたのに・・・お義母さんよ」
「え」
「お義母さん!1年もしないうちに死んじゃって、私、また姑の苦労してんのよ!」
亡き母梅子のイビリから逃げてきたというのである。更には「昼間からワインなんか飲んじゃって。私のときとずいぶん違うじゃないの。しばらくゆっくりさせて貰いますからね!」そういって居座ってしまった。
さあ大変。真衣は結婚生活に姑の苦労をせずに済むと思っていたら、幽霊の先妻が現れて言いたい放題。二人は怖いわ、腹は立つは。ところがそのとき声が響く。「克子!」。圭輔の亡き母・梅子まで出て来たのである。梅子は克子と真衣を見て「嫁が二人になった。こりゃイビリ甲斐がある」これまた居座ってしまった。
さあ、一つ屋根の下に圭輔と真衣と幽霊の先妻と姑の同居が始まった。そこへ押しかける町内の人や雑誌編集長の尾崎。健太郎まで戻ってきて、圭輔は幽霊を隠そうとてんやわんやの大騒動・・・しかし圭輔の心は母と暮らすことでだんだん落ち着いてきて・・・。
梅子と克子はどうして出てきたのか?この先どうなっていくのか?二人はあの世に帰るのか?その謎が解けたとき、家族の、母の、妻の愛に圭輔は涙するのだった。
日常の中で起こるとんでもない出来事の中、家族の本当の愛を改めて感じる、笑いと涙のホームコメディ。